https://cookbiz.jp/soken/knowhow/restaurant_specialty/
飲食店には多くの業態がありますが、近年はさらなる差別化のため、パンケーキ専門カフェや、地域食材限定の居酒屋など、多くの専門店が生まれてきました。ここでは、専門店化が加速する背景や、経営上のメリットなどについて考察したいと思います。
この20年ほどの間で、飲食業界は大きく変化してきました。レストランやカフェという業態が単なるそれだけではなく、例えば特定の産地の食材をテーマにしたレストラン、パンケーキ専門のカフェといったように、さらに細分化されてテーマ性や専門性を持つことが常識になってきたのです。
それには一体どのような理由があるのでしょうか。そして、飲食店経営の観点からは、どのようなメリットがあるのでしょうか。さっそく、ひとつずつ考えていきましょう。
専門店が増えてきた理由とは?
カフェという業態を例にとって考えてみましょう。90年代のカフェブームの頃は、「カフェ」という言葉の響きに人々は魅力を感じました。喫茶店にはなかった、女性受けする内装やスタッフの制服。これまでに聞いたことのない、エスプレッソやカフェラテという言葉そのものがお客様の心を掴みました。「カフェでお茶しよう!」というのがひとつの流行になったのです。
しかし、しばらくして「カフェでお茶しよう!」では不十分になりました。お客様からは「そのカフェってどんなカフェ?」「もっと美味しいカフェラテを飲みたい!」というような声が上がるようになり、カフェはさらなる差別化や専門性が求められるようになってきたのです。もちろん、これはカフェに限った話ではありません。レストランやラーメン店にも同じことが言えます。
ではなぜ差別化が求められるようになったかと言うと、それはやはり飲食店の店舗数増加による競争激化が一番の理由と言えるでしょう。店舗数が増えることにより、お客様はお店をシチュエーション毎、メニュー毎に使い分けるようになりました。いつでも、どんな時でも使ってもらえるオールマイティなお店はほとんど存在しません。飲食店は、お客様の利用目的に合わせて専門性を持つ必要が出てきたのです。
「専門店化」することのメリットとは?
専門店として時代の流れや顧客ニーズに対応し続けるのは簡単なことではありませんが、専門店化することは経営的にも大きなメリットをもたらします。だからこそ、長年にわたって専門店は広がり、定着してきました。
では、専門店化の5つの主なメリットをご紹介しましょう。
食材ロスが少なくなる
主力メニューを絞り込み、発注する食材の種類を減らすことで、食材ロスも減らすことができます。パスタ、ピザ、カレーの3本柱でメニューを組み立てているお店より、パスタのみで営業しているお店の方が、食材ロスが少ないのは明らかです。主力メニュー毎に毎日数パーセントのロスが出ているとしたら、結果的には、3倍の食材ロスが出る可能性も考えられます。
オペレーション効率がよくなる
主力メニューを一本化すれば、仕入れや仕込みなどの準備時間も効率化できます。また、注文内容もシンプルになるので、オーダーミスも減ります。人件費も削減でき、スタッフのトレーニング期間を短縮化できるメリットもあるでしょう。
メニューのクオリティーが高くなる
専門店にすれば必然的にメニューのクオリティーが高くなる傾向があります。パスタ、ピザ、カレーを毎日それぞれ20食ずつ調理するのと、パスタだけ毎日60食つくるのでは、「質の高さ」に開きがでるのは明らかです。お客様にとって、いつ来ても美味しいという「質の安定」はとても重要です。量をこなすことで、そのぶん料理の品質の向上と安定化も期待できます。
口コミが増える
専門店は、お客様から見て「どんなお店なのかわかりやすいこと」が大切です。売りがわかりにくいお店が口コミされることはまずありません。わかりやすい何か、伝えたくなる何かがあるから注目されるのです。口コミがされやすい店であれば、SNS上の拡散にも期待がもてるでしょう。
メディアに受け入れられやすい
他店とは異なる特徴的なテーマやキーワードを持ったお店は、メディアの露出も増える傾向にあります。雑誌などメディアに掲載される場合も、何か際立った専門性、話題性を持ったお店の方がより注目を集めることは間違いありません。差別化がしやすく、専門性にオリジナリティがあれば、メディアで紹介されやすいでしょう。
このように専門店化とは、効率、品質、集客の面において非常に優秀な形だと言えます。もちろん、マーケティング調査や商品開発などの地道な準備や覚悟が必要になりますが、お客様と経営者の双方にとって大きなメリットがあるものだということがおわかりいただけるかと思います。(続きは本文をお読みください)